行政書士試験対策ノート みんみんみんぽー

私が行政書士試験の受験のために記述したノートを、可能な限りブログにアップしていきます。これは、試験勉強のためのノートであり、実際の法律解釈とは異なる場合がありますのでご注意ください。これからの受験生の方のために、少しでも参考になればよいと思います。

不動産物権変動

物権の変動とは、物権が「発生」・「変更(移転を含む)」・「消滅」することを言います。

 物権には「公示の原則」があり、その物に対して物権が存在することが広く公になっていることが必要です。ですが、日本の登記制度(不動産)には公信力がありません。あくまでも不動産の登記は”対抗要件”であって、登記がなければ所有権がないわけではありません。

 

民法177条

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない 。(一部括弧略)

 

民法でも最重要の一つとなる条文です 。

不動産の物権(所有権や抵当権など)は、登記をしなくても契約等により発生・移転しますが、登記をしなければ所有権等を主張する第三者が現れたときに対抗できないのです。これは、あくまで対抗要件ですから、「登記があれば第三者に負けない」だけであることに注意してください。登記を持っている=所有者ではないという言うことです。

 

この場合の第三者の定義は、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、不動産に関する物権の得喪・変更の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」であるとされています。

まず、当事者とその承継人は第三者ではありません。

「不動産に~正当な利益を有する者」とは、相手方に対して「自分に権利があるんだ」と主張することが正当である者ということです。だから、一切だれでもよいわけではありません。第三者に該当しないとされる者に、不法行為や不法占拠により主張する者と、全くの無権利者などがあげられます。これらには正当な利益がない、ということです。

 

不動産に関する物権の対抗関係とは、二重譲渡の関係がシンプルでわかりやすいでしょう。

Aが甲土地をBとCに二重に売却したような場合です。

この場合、Aは刑法上の罪にはなりますが、民法上、BとCどちらを甲土地の所有者にするのか?という問題です。

BもCも、お互いに見れば、上記民法177条でいう「正当な利益」を主張するにあたる第三者ということになります。

この場合、Bが先に買ったからBのもの、でもなく、Cが高く買ったからCのもの、でもなく、先に登記を備えた者が勝ち、と民法177条は言っているのです。

AからBが先に登記の移転を受けていれば、Cは甲土地の所有権は手に入りません。民法上は、CはAに対して損害賠償を請求するしかないのです。

 

では、この場合においてCが背信的悪意者に該当すればどうでしょうか?

背信的悪意者とは、AとBの売買契約を知っていてBの甲土地の取得を妨害する目的などで売買に介入した場合などです。

この場合、もしCが登記を備えていたとしても、Cを保護する理由はなくBは登記なしで対抗できます。

 

Cからの転得者であるDはどうでしょうか?

Dが善意者または単純悪意者であれば、第三者に該当し、対抗には登記が必要となります。Dが背信的悪意者である場合、やはりDは保護に値しません。

Cが善意者で、Dが背信的悪意者である場合、以下の2つの考え方があります。

 

・絶対的構成説

Cが善意であれば、Cが登記を備えた時点でCに確定し、その承継人Dが背信的悪意者であっても登記を備えなければ対抗できない。

・相対的構成説

民法177条の第三者たる要件は、個別に判断するべきであり、Dが背信的悪意者と認められればBは登記なくして対抗できる。

 

どちらが有力とは言えませんが、判例ではケースバイケースのようです。

 

 

このように、不動産物権変動と登記の関係は、対抗の相手方が177条の第三者であるか否かによって大きく変わってきます。

 

これは、取り消し行為の前後でもかわってきます。

AがBに対し甲土地を売却した場合において、その契約が取り消された後にCがBから甲土地を二重譲渡された場合はどうなるでしょうか。

この場合、AとCは対抗関係に立ちます。

Bから甲土地の返還を受けるはずのAと、売却により甲土地を買い受けたCが対抗関係となるのです。Cが背信的悪意者であれば、Aは登記なしで対抗できます。

取り消し後の第三者に対しては、原則的に登記がなければ対抗できません。Cは177条の第三者となるわけです。例外的に、相続放棄による場合は遡及効があるため登記なしで対抗できます。

 

AがBに甲土地を売却した後、BがCに売却し、AB間の売買が取り消された場合はどうでしょうか。

こちらは、Cが第三者に該当する場合(配信的悪意者でない場合)、取り消し原因によって登記が必要か否かが変わってきます。

登記なしで対抗可能な第三者は、取り消し原因が以下の場合です。

・制限行為能力を原因とした取り消し

・強迫を原因とした取り消し

・時効取得を原因とした取り消し

相続放棄を原因とした取り消し

これに対し、以下の場合は登記が必要です。

債務不履行などによる解除

・遺産分割

登記があっても、詐欺行為などによる取り消しは、善意の第三者の利益を害することはできません。(対抗できません)