根抵当権
根抵当権とは、日常的に継続して発生する債権を担保する抵当権のことです。
一定の範囲に限定し、それに属する不特定の債権を極度額の範囲で担保する抵当権のことを根抵当権と呼びます。
たとえば、家電メーカーのAが家電量販店のBに対して、継続的に家電を供給しますが、この家電の代金債権を担保するために、量販店Bの所有する不動産甲に抵当権を設定したとします。
この場合、継続的にBに対し納品が行われるので、そのたびに甲に対して抵当権の設定登記と末梢登記を繰り返していては、手間がかかるどころか現在の土地甲の状態が誰も把握できなくなってしまいます。
そこで、甲に対して、一定の金額範囲(極度額)を設定し、その取引を担保する仕組みが根抵当権です。
根抵当権の被担保債権は、その取引によって生じた債権に限られるので、被担保債権を特定して設定しなければなりません。ABの間に生じた債権すべてを担保するような根抵当権は設定できません。
根抵当権が成立する契約の内容は以下の4つです。
1 極度額
2 債務者
3 担保する債権の範囲
4 元本確定期日
根抵当権は、確定した元本・利息・遅延損害金のすべてについて、極度額を限度として行使できます。
極度額以上の担保はしないということです。
根抵当権に変更が生じたとき、変更の項目によって利害関係人の承諾が必要になる場合があります(元本確定前)。
1 極度額 → 利害関係人全員の承諾が必要
2 債務者 ↘
3 被担保債権 → 承諾不要
4 元本確定期日 ↗
元本の確定期日を定めるときは、5年以内とされています。確定期日を定めていないときは、確定請求ができます。
それまで一定の範囲内で発生と消滅を繰り返していた債権が、ある事由の発生により確定してそれ以降の債務を担保しない状態になることを”元本の確定”といいます。
元本の確定理由は以下のようなものです。
- 元本確定期日の到来。
- 根抵当権者又は債務者の相続開始後6ヶ月以内に指定根抵当権者の合意の登記又は指定債務者の合意の登記をしない時は、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされる。
- 合併の場合の確定請求。
- 元本確定期日の定めがない場合において、根抵当権設定者による元本確定請求の時から2週間が経過した場合。
- 元本確定期日の定めがない場合において、根抵当権者による元本確定請求をした場合。
- 根抵当権者が抵当不動産について競売・不動産収益執行・物上代位の差押を申し立て、開始決定又は差し押さえがあった時。
- 根抵当権者(滞納処分庁)が設定している抵当不動産に対して滞納処分による差押えをした時。
- 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続きの開始又は滞納処分による差押があったことを知った時から2週間を経過した時。この場合に、競売手続の開始・差押が消滅した時は、確定しなかったものとみなされる。ただし、元本確定としてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得したものがいる時は確定する。
- 債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けた時。この場合に、破産手続開始の決定の効力が消滅した時は、確定しなかったものとみなされる。ただし、元本確定としてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得したものがいる時は確定する。
元本の確定前の根抵当権には随伴性はありません。
よって、元本確定前に被担保債権の一部が移転しても、根抵当権は移転しません。元本が確定した後の移転は普通の抵当権と同じように、随伴性があります。