取り消しと無効
民法上の取り消しとは、取り消し権を持つ者による相手方に対する一方的意思表示であり、その効果は遡及効です。
それまでに受け取っていた金銭や物は不当利得となり、返還義務が生じます。
この場合、受益者が善意で受け取った物は現存利益の返還で済み、取り消し原因に悪意であれば利益全部の返還と利息、損害があれば賠償が必要となります。このとき、取り消し原因が制限行為能力を理由としての取り消しである場合、善意・悪意を問わず現存利益の返還だけで済みます。
取り消しと違い、無効である行為は最初から効力を持ちません。
ですので、無効行為を取り消すことはできません。原則として無効行為の追認はできませんが、無効な行為を無効であると知った上で追認した場合、新たな行為の申し込みとして扱うことができます。
取り消し権の消滅時効は、追認可能な状態となってから5年、行為の時から20年のいずれか早いほうの経過時です。
追認は取り消し権の放棄と考えられます。
追認の取り消しはできません。
当事者の意思で一定の行為を行った場合、法律上の追認として扱われる場合があります。これを、法定追認と言います。
法定追認には以下のような行為があたります。
・全部または一部の履行をする・受ける
・相手方に対して履行の請求をする
・担保を供与する
・権利の全部または一部の譲渡
・相手方に強制執行をかける