留置権
留置権とは、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物の占有を継続する(留置する)内容の担保物権です。
たとえば、車などの修理を受けて、修理代の弁済を受けるまでその車の占有ができることです。
民法295条
- 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
- 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
民法295条の条文からわかる、留置権の成立要件は以下の4つです。
1 その物に関する債権があること
2 他人の物の占有をしている債権者であること
3 債権が弁済期にあること
4 占有が不法行為によりはじまったものでないこと
たとえば、不動産の二重譲渡の関係において、留置権が成立しない場合があります。
例 AがBとCに甲建物を二重譲渡した。甲建物はBが占有、登記はCに移転した。BはCに対して留置権を主張できるか?
この場合、要件は満たしているようですが、BはCに対して留置権を主張できません。
民法177条により、Cに登記が移転している以上、Bは甲建物の所有権をCに主張できません。よって、BはAに対する損害賠償請求権を被担保債権とする甲建物の留置権をCに対して主張できません。
留置権が消滅する要件は次の4つです。
1 留置権者が義務違反したときは債務者が留置権消滅請求できる
2 被担保債権の消滅時効
3 代担保の提供(債務者が代わりの担保を提供すること)
4 留置権者がその物の占有を喪失したこと
留置権者は留置物の管理に関して、善管注意義務を負い、保存行為以外の行為を行う場合(使用・貸借・担保の用に供する)は、債務者の承諾が必要となります。