表見代理
表見代理とは、広義の無権代理の一種ではあるが、本人にその効果が帰属する場合のことを言います。過失なく代理権を信じた相手方を保護する規定です。
狭義の無権代理の場合、無権代理人の行為は本人に効果が帰属しないことが原則ですが、表見代理が成立する場合、この行為の効果は本人に帰属します。
広義の無権代理行為からこの表見代理をのぞいたものが狭義の無権代理ということになります。
他人の無権代理行為を本人に効果帰属させるわけですから、何らかの本人の帰責性が必要となり、さらに相手方を保護する必要性がある場面に限られます。
表見代理の成立要件
1、虚偽の外観(あたかも代理権があるかのような外観)の存在
2、本人の帰責性
3、相手方の善意無過失
・代理権授与表示型の表見代理
本人から代理人(表見代理人:正確には代理人ではない)に対して、代理権を授与したかのような外観を作り出したとき、表見代理人がその代理権の範囲内の行為を行うと、その効果は本人に帰属します。
代理権を与えたかのような外観を作り出したことが本人の帰責性となります。
・権限外行為の表見代理
本人から何らかの代理権を与えられている代理人が、その代理権の範囲を越えて行為を行った場合、表見代理となり、本人に効果帰属します。
たとえば、「10万円銀行から借りる契約をする」代理権を与えられた代理人が、100万円を借りてきたような場合です。相手方(銀行)が、そのような事情を知る由もない場合本人は銀行から100万円借りたことになります。ですが、お金を借りてくる代理権のはずが、車を借りてきたような場合は表見代理とはなりません。
・権限消滅型の表見代理
無権代理人がかつて代理権を持っていた場合、無権代理人がその範囲内での行為を行ったとき、相手方がその代理権の消滅について善意無過失であれば表見代理となります。
すべて、本人は自己の代理人について選任責任を負っているとの考え方からきていると思われます。
相手方は、無権代理人の責任追及と表見代理の主張の両方ができる場合、相手方の選択によると言われていますが、少数意見では、表見代理が主張できるときは眼けん代理責任を追及できないとする意見もあります。